「このままどんどん近視が進んでしまうのでは…」
眼科でそう言われ、不安になった親御さんも多いのではないでしょうか。
最近、子どもの近視進行を抑える方法として
“低濃度アトロピン点眼”(リジュセア®ミニなど)が注目されています。
この記事では、診察室や検査室で日々お子さんの目を見ている
視能訓練士の視点から、
- どんな目薬なのか
- どんな子に向いているのか
- 実際に気をつけたいポイント
を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
関連記事:【そもそも近視進行抑制とはどういうことなのか解説してます】

低濃度アトロピン点眼とはどんな治療?

低濃度アトロピン点眼は、
近視を治す治療ではなく、進行スピードを抑えるための点眼治療です。
使われるのは、
もともと眼科で長年使われてきた「アトロピン」という成分を、
**ごく薄い濃度(0.025%前後)**にした目薬。
日本では
リジュセア®ミニ点眼液が代表的です。
リジュセア®ミニは、参天製薬が開発した低濃度アトロピン点眼薬で、
子どもの近視進行を「ゆるやかにする」ことを目的として使われます。※製品の詳細は、参天製薬の公式発表をご確認ください
→ 参天製薬公式:リジュセア®ミニについて
なぜ点眼で近視の進行が抑えられるの?

正直なところ、
「なぜアトロピンで近視の進行が抑えられるのか」は
完全には解明されていません。
ただし研究から、
- 眼球が前後に伸びる(=近視が進む)仕組みにアトロピンがブレーキをかけている可能性
が示されています。
ここで大事なのは、
視力表の数字だけでなく
「眼球の成長(眼軸長)」に関わる治療という点です。
眼軸長とは、目の奥行き(前から後ろまでの長さ)のことで
近視が進む=眼軸長が少しずつ伸びているということなのです。
問題なのは、
一度伸びた眼軸長は、元に戻らないということです。
眼軸長が伸びすぎると、将来の眼疾病リスクが上がる
眼軸長が過度に伸びた状態(=強度近視)になると、
大人になってから次のような目の病気のリスクが高くなることが分かっています。
- 緑内障
- 網膜剥離
- 加齢黄斑変性
- 近視性黄斑症 など
これらは
「見えにくい」だけでなく、視力に大きく影響する病気です。
眼トリさん強度近視の場合、緑内障で約14倍、近視性の黄斑症で約40倍リスクが上がるといわれています。
近視進行抑制は「今の見え方」より「将来の目」を守る治療
低濃度アトロピン点眼は、
視力表の数字を良くするための治療ではありません。
目的は、
眼軸長の伸びをゆるやかにし、近視の進行スピードを抑えること。
つまり、
- 今すぐ困っていなくても
- 将来の目の病気リスクを減らすために
“成長期の今だからこそ意味がある治療”なのです。



視能訓練士の立場から見ると
「見え方」ではなく
“目の成長の仕方そのもの”にアプローチしている
というのが、従来のメガネ・通常コンタクトとの大きな違いです。
どんな子が対象になるの?


低濃度アトロピンは、
すべての近視の子に使うわけではありません。
眼科で検討されることが多いのは、例えばこんなケースです。
- 小学生で近視が始まった
- 半年〜1年で度数が一気に進んでいる
- 両親が強度近視
- 眼科で「進行が早い」と言われた
特に
成長期(小学生〜中学生)は眼球が伸びやすい時期。
このタイミングで
「進み方をゆるやかにする」目的で使われることが多いです。
点眼の方法と生活への影響


点眼方法
- 1日1回(多くは就寝前)
- 両眼に1滴ずつ
生活への影響は?
低濃度なので、
- 強いまぶしさ
- ピントが合わなくなる
といった影響は、
高濃度アトロピンに比べてかなり少ないとされています。
学校生活や習い事に
ほとんど影響が出ないケースが多いのも特徴です。
効果はどのくらい期待できる?


低濃度アトロピンは、
- 近視を止める
- 視力を回復させる
治療ではありません。
「進行スピードを抑える」治療です。
研究では
何もしない場合と比べて、30%前後進行がゆるやかになる傾向が示されていますが、
- 効果の出方には個人差あり
- 年齢・進行スピード・生活環境にも左右される
という点は、
必ず理解しておく必要があります。



視力の数字がよくなるわけではないんだね…



近視を元に戻すことはできないよ!
少しでも近視の進行を抑制して、将来の目の病気になるリスクを軽減する目的であることを理解して始めないと、悩んだり後悔するから気を付けよう!
気になる費用の目安は?


低濃度アトロピンは
**保険適用外(自費診療)**です。
費用は医療機関によって異なりますが、目安としては
- 点眼薬代:月5,000円前後
- 別途:定期検査代(3000~8000円前後)がかかることもあり
ひと月の目安:約10000円前後
「一時的な出費」ではなく
数年単位で続ける治療になることが多いため、
無理なく続けられるかも大切な判断ポイントです。
オルソケラトロジーやマイサイトワンデーと併用できる?


ここ、親御さんから とてもよく聞かれるポイントです。
結論からいうと
併用されることはあります。
- オルソケラトロジー × 低濃度アトロピン
- 近視進行抑制用ソフトコンタクト(マイサイト ワンデー)× 低濃度アトロピン
といった組み合わせは、
実際の眼科診療でも検討されることがあります。
なぜ併用するの?
それぞれ
近視進行を抑える仕組みが違うため、
- 点眼 → 眼球の成長にブレーキ
- コンタクト → 見え方・網膜への刺激をコントロール(遠視性デフォーカス)
と、
相乗効果が期待できる可能性があるからです。
⚠️ ただし
- すべての子に必要なわけではない
- 眼科での判断が必須
- 費用が高額
という点は強調しておきます。
副作用や注意点は?


低濃度とはいえ、医薬品です。
- まぶしさを感じる
- 軽い目の違和感
などが出ることがあります。
また、
- 自己判断で中止・再開しない(リバウンドあり)
- 定期的な視力・屈折・眼軸長チェックが重要
ここは
必ず眼科の指示に従うことが大前提です。
視能訓練士から伝えたいこと
私たち視能訓練士は、
- 視力
- 屈折
- 眼軸長
- 見え方の変化
を長期的に追っていく立場です。
低濃度アトロピンは
「魔法の目薬」ではありません。
でも、
- 何もしない
- 進むのを見守るだけ
という選択肢だけでなく、
“進行をコントロールする”という考え方ができる時代になってきています。
まとめ:低濃度アトロピンは「早めに知っておきたい選択肢」
- 近視を治す治療ではない
- 近視の進行スピードをゆるやかにする点眼
- 将来の眼疾患リスクを軽減させることが第一の目標
- 成長期の子どもで検討されることが多い
- 費用・併用・続けやすさを含めて眼科で相談が大切
「うちの子は対象になるのかな?」
そう思ったときが、
眼科で相談するベストタイミングかもしれません。




