「最近なんだか視界が白っぽくかすむ」「光がまぶしく感じる」──そんな変化を感じていませんか？
もしかすると、その症状は“白内障”によるものかもしれません。
白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる目の病気です。
しかし、進行のスピードや見え方の変化には個人差があり、初期のうちは自覚しにくいことも少なくありません。
この記事では、視能訓練士の立場から、白内障の原因・症状・見え方の特徴・治療法についてわかりやすく解説します。
見え方の変化を感じたときにどうすればいいか、正しい判断の参考にしてください。
白内障とは？──誰にでも起こる“目の老化現象”
白内障とは、目の中の水晶体（レンズ）が濁ってくる病気です。
水晶体は本来、透明で光をしっかり通す役割を持っていますが、加齢や紫外線、病気、薬の副作用などの影響で少しずつ濁っていきます。
加齢性白内障は、60歳以上の方のほとんどに程度の差はあれ発症すると言われています。
つまり、「白内障になる＝特別な病気」ではなく、「年齢を重ねれば誰にでも起こる変化」といえます。
眼トリさん年を重ねると白髪になるのと同じような、加齢性の変化だね！
まっしゅ白内障は“cat”っていうんだにゃ
白内障の主な原因
白内障は、ひとつの原因で起こるとは限りません。
多くは加齢が関係していますが、生活習慣や病気、薬の影響など、いくつかの要因が組み合わさって進行します。
加齢（最も多い原因）
私たちの体と同じように、目の中の水晶体も年齢とともに老化していきます。
水晶体の中のたんぱく質が変性し、少しずつ白く濁ってくるのです。
60歳を過ぎると多くの方に見られ、80歳ではほぼ100%白内障の所見があるといわれています。
紫外線や喫煙などの生活習慣
強い紫外線を長年浴びると、水晶体のたんぱく質が酸化しやすくなり、濁りが進行します。
また、喫煙も白内障のリスクを高める代表的な要因。
タバコの煙に含まれる活性酸素が、水晶体にダメージを与えてしまうのです。
屋外作業の多い方や喫煙習慣のある方は、紫外線対策や禁煙を意識することで進行を遅らせられます。
糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患
糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで水晶体の中に糖分が溜まり、濁りやすくなります。
また、アトピー性皮膚炎の方は、炎症やステロイド薬の使用などが影響して若い年齢でも白内障が進行することがあります。目をこすることも多いため網膜剥離のリスクも上がります。
こうした全身疾患がある場合は、内科や皮膚科での治療とあわせて定期的な眼科検診が大切です。
【糖尿病がある方は必見↓↓】
目のケガや炎症（外傷性・併発性白内障）
ボールが当たるなどの強い衝撃や、目の中の炎症（ぶどう膜炎など）がきっかけで白内障が起こることがあります。
ケガによる白内障は進行が早いことも多く、放置すると視力が大きく低下する場合があります。
スポーツ時や金属加工作業中などは保護眼鏡の着用を意識しましょう。
眼トリさん眼球（角膜）に鉄片が刺さると、眼球鉄さび症といって目の表面が白く濁ってしまい、視力低下、最悪の場合は角膜移植になることもあります。
必ず保護メガネを正しく使用しましょう！
ステロイド薬の長期使用
ステロイド薬は炎症を抑える優れた薬ですが、長期間使用すると白内障を引き起こすことがあると知られています。
点眼・内服・吸入・外用（皮膚）など、使用方法を問わず影響が出ることがあり、またステロイドによる緑内障の合併のリスクもあります。
自己判断でやめずに、主治医と相談しながら最小限の量でコントロールすることが重要です。
【緑内障についてはこちらにまとめてあります↓↓】
世界における失明原因の第一位は白内障です。
ただし、日本を含む先進国では白内障手術の進歩により、失明するケースはほとんどなくなりました。
しかし、発展途上国では、手術できる病院・医師の不足など医療環境が整っていないため失明に至ることがまだ多いのが現状です。
白内障の症状と見え方の特徴
白内障の進行とともに、次のような見え方の変化が起こります。
- 視界がかすんで白っぽく見える
- 光がまぶしい・夜間の運転がしづらい
- ものが二重・三重に見える（片目で）
- 眼鏡をかけても見えにくさが改善しない
- 色が黄色っぽく見える
視力低下の原因が白内障によるものか、ほかの病気によるものかを見分けるためにも、眼科での視力・眼圧・OCT・眼底検査などが必要です。
【眼科で行う主な検査についてまとめました】
どんな人が白内障になりやすい？
次のような方は、白内障の進行が早まる傾向があります。
- 強い日差しの下での屋外作業が多い
- 喫煙・飲酒習慣がある
- 糖尿病がある
- 長期間ステロイド薬を使用している
- 目の病気（ぶどう膜炎、外傷など）の既往がある
こうした方は、定期的な眼科検診で進行の有無を確認することが大切です。
白内障の治療法
① 点眼治療（進行予防）
初期の白内障では、「進行を遅らせる点眼薬」が処方されることがあります。
ただし、濁りを元に戻す効果はありません。
定期的な検査で進行を確認しながら、生活の支障が出るまでは経過観察するケースが多いです。
まっしゅいつか目薬で白内障がよくなる未来が来るといいにゃ
② 手術治療（根本的な治療）
視力低下が進行し、日常生活に支障をきたす場合は手術が唯一の根本的治療になります。
濁った水晶体を取り除き、**人工の眼内レンズ（IOL）**を挿入することで、透明な視界を取り戻します。
手術は局所麻酔で行われ、15分程度の日帰り手術が一般的です。
術後は見え方がクリアになりますが、眼鏡が必要になる場合もあります。
眼内レンズの種類
手術で挿入する眼内レンズには、いくつかの種類があります。
それぞれに特徴や費用の違いがあり、どのレンズを選ぶかによって「見え方」や「生活の快適さ」が変わります。
単焦点レンズ（健康保険適用）
単焦点レンズは、ピントが合う距離が1か所だけのタイプです。
たとえば「遠くにピントを合わせる」場合は、近くを見るときに老眼鏡が必要になります。
シンプルで見え方が安定しており、保険適用で手術を受けられます。
もっとも一般的で、90％以上の方が単焦点レンズを選択しています。
多焦点レンズ（3焦点）
多焦点レンズは、遠く・中間・近くの3か所にピントを合わせられるレンズです。
日常生活の多くの場面で眼鏡を使わずに過ごせるようになります。
ただし、夜間の光のにじみ（グレア・ハロー）を感じる場合があります。
このレンズは「選定療養」に指定されており、
保険診療と自由診療の併用が可能です。
（＝手術や検査の基本部分は保険、レンズ代などの差額のみ自費）
多焦点レンズ（焦点深度拡張タイプ：EDOF）
EDOF（Extended Depth of Focus）レンズは、焦点の合う範囲を広げることで、より自然な見え方を実現します。
3焦点レンズよりも夜間のまぶしさが少なく、パソコン作業など中間距離の見え方に優れていますが、細かい文字を近方で見る場合には多少見えずらい場合があります。
こちらも「選定療養」の対象であり、費用は医療機関によって異なります。
眼トリさん年齢、元の屈折（遠視or近視）、眼疾患の有無、生活スタイル、職業など様々な要因を考慮して、その人にとってBESTな眼内レンズを眼科医と相談して決めよう！
白内障手術 Q&A
Q1. 手術は痛いですか？
A. 点眼による局所麻酔で行うため、痛みはほとんどありません。
圧迫感や水が触れる感覚を感じる程度です。
Q2. 手術時間はどのくらい？
A. 実際の手術時間は10〜20分ほどです。
ただし、前後の準備や説明を含めると、1〜2時間程度を見ておくと安心です。
Q3. 入院は必要ですか？
A. 多くの方は日帰り手術です。
合併症のある方やご高齢の方は、1～３泊程度の入院を勧められる場合もあります。
Q4. 手術後すぐ見えるようになりますか？
A. 翌日から少しずつ明るく感じるようになりますが、
視力が安定するまでには1〜数週間かかることがあります。
Q5. 手術後、また白内障になることはありますか？
A. 白内障が再発することはありませんが、水晶体の袋（後嚢）が濁る【後発白内障】で視力が低下することがあります。外来でのレーザー治療で濁りを除去することができるので、心配はいりません。
手術のタイミングの目安
「いつ手術したらいいの？」と迷う方も多いですが、目安は次の通りです。
- 運転免許更新の視力（0.7）に届かなくなってきた
- テレビや新聞の文字が読みづらい
- 仕事や趣味（裁縫・読書など）に支障が出てきた
- 強いまぶしさで外出がつらい
視力の数値だけでなく、本人の生活の不便さが重要な判断基準になります。
眼トリさん視力が1.2でも手術する人もいれば、0.4でも不自由ないと手術しない人もいます。
また、過度に進行した白内障や、ほかの合併症（浅前房など）がない場合、眼科医のほうから手術を進められることは基本的にありません。
見え方に困っているようであれば、白内障の程度などを眼科医と相談の上、手術時期を判断しましょう。
白内障と間違われやすい病気
白内障と似た症状を示す病気には以下のようなものがあります。
- 加齢黄斑変性
- 糖尿病網膜症
- 角膜疾患
- 緑内障
これらは白内障と併発することもあるため、見えにくさを「年のせい」と自己判断しないことが大切です。
【最近増加傾向の加齢黄斑変性についてまとめてます↓↓】
白内障を予防・進行を遅らせるために
- 紫外線カットのサングラスや帽子を使う
- 禁煙・節酒を意識する
- バランスの取れた食事（特に抗酸化作用のあるビタミンC・Eなど）
- 糖尿病や高血圧のコントロール
こうした日常の工夫で、白内障の進行をある程度遅らせることができます。
まとめ
白内障は、加齢とともに多くの人が経験する「目の変化」です。
それ自体は怖い病気ではありませんが、進行しすぎると緑内障発作やほかの疾患の見落としにつながることもあります。
気になる症状があるときは、「まだ大丈夫」と思わず、眼科で一度チェックを受けてみましょう。
早めの対応が、あなたの「見える」を長く守ります。
