「最近、新聞の文字がゆがんで見える」「まっすぐな線が波打って見える」——そんな経験はありませんか?
それはもしかすると、“加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)”という目の病気のサインかもしれません。
加齢黄斑変性は、視力の中心にある「黄斑」が傷むことで、見たい場所が見えにくくなる病気です。
日本では中高年を中心に増加しており、失明原因の第4位にも挙げられています。
この記事では、現役視能訓練士の立場から、
🔹加齢黄斑変性の原因
🔹ゆがみなどの見え方の特徴
🔹検査と治療の流れ
を、図や実際の検査画像とともにわかりやすく解説します。
「年のせいかな…」と見過ごしてしまう前に、目のサインを見逃さないための第一歩にしていただければ嬉しいです。
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1. 加齢黄斑変性とは?

私たちの目の奥(網膜)には「黄斑(おうはん)」という、ものを見るために最も重要な部分があります。
ここはカメラでいえば“フィルムの中央”にあたり、物の形や色、細かい文字を見分ける中心的な役割を担っています。
加齢黄斑変性は、この黄斑の細胞が年齢や生活習慣などの影響で傷み、中心視がゆがんだり暗く見えたりする病気です。
日本国内の調査では、50歳以上の約1.2%(80人に1人)が加齢黄斑変性を患っているといわれています。
また患者数も年々増える傾向にあり、日本人では男性に多いことが特徴です。
これは高齢者における、男性の喫煙率が高いことが影響していると考えられます。
2. どんな見え方になるの?

初期には「片方の目だけ線がゆがんで見える」「真ん中の文字がかすむ」など、軽い違和感で気づくことが多いです。
進行すると、視界の中心が黒く抜ける(中心暗点)ように感じることもあります。
👉 自宅で簡単に確認できるのがアムスラーチャート。
方眼紙のような格子を片目ずつ見ることで、ゆがみや欠けを早期に発見する手助けになります。
アムスラーチャートのやり方
- 下の表と目の距離が30センチになるように近づきます。
- 普段、近くを見えやすくするための眼鏡(老眼鏡)を使っている方はかけてください。
- 片目を隠し(つぶり)、もう片方の目で見え方に異常(歪みや線の欠け)がないか確認します。
- 同じようにもう片方の目も見え方を確認します。

次のような見え方の場合は、必ず眼科を受診しましょう。

眼トリさん必ず片目ずつ、近くを見るための眼鏡も使用してやりましょう。
屈折異常(乱視など)による歪みであれば、緊急性はありません。
【もし大きく部分的に見えない場合はこちらの検査も受けたほうがいいかもしれません】


3. なぜ起こるの?


主な原因は「加齢」ですが、次のような要因も発症リスクを高めます。
- 喫煙習慣
- 脂質の多い食事
- 強い紫外線曝露
- 家族歴(遺伝的要素)
これらが黄斑部の代謝異常を引き起こし、老廃物が蓄積して網膜の下に“ドルーゼン”という沈着物ができ、視細胞の障害へとつながります。
4. 加齢黄斑変性の2つのタイプ


- 滲出型(ウェットタイプ)
網膜の下に異常な新生血管ができて出血・滲出液を起こすタイプ。進行が早く、視力低下も急激です。 - 萎縮型(ドライタイプ)
黄斑の細胞が徐々に萎縮していくタイプ。進行は緩やかですが、最終的には中心視が障害されます。
滲出型はOCT(光干渉断層計)での網膜下液や出血の確認が重要になります。
5. どんな検査をするの?


眼底写真やOCT検査に加えて、蛍光眼底造影で新生血管の有無を確認することがあります。
最近では、OCTアンギオグラフィといって、造影剤を使わず血流を評価できる新しい検査も登場しています。
視能訓練士として検査を担当していると、OCT画像のわずかな変化が早期発見につながることを実感します。
「見えにくさ」は主観的でも、画像には客観的な変化が表れることが多いのです。
【加齢黄斑変性の診断に必須のOCT検査について詳しくまとめました↓↓】


6. 治療法について


滲出型では、抗VEGF薬の硝子体内注射が第一選択です。
新生血管の成長を抑え、視力の維持を目指します。
ほかにも、**光線力学療法(PDT)**を組み合わせる場合があります。
萎縮型には根本的な治療はありませんが、進行を抑える目的で**サプリメント(AREDS2処方)**が用いられることもあります。
抗VEGF薬の硝子体内注射とは?
「VEGF(血管内皮増殖因子)」という物質は、新しい血管を作る働きを持っています。
しかし加齢黄斑変性では、このVEGFが異常に増え、網膜の下に“もろい新生血管”を作ってしまうのです。
抗VEGF薬はその働きを抑える薬で、出血や滲出液を減らし、視力の維持や改善を目指す治療です。
現在は主に、ルセンティス・アイリーア・ベオビュ・バビースモなど複数の薬剤が使われています。
● 治療スケジュールと通院の目安
最初の3回は約1か月ごとに注射する「導入期(loading phase)」が基本です。
その後は、病状の安定に合わせて2~3か月ごとに継続投与、または必要時投与(PRN)という方法を取ります。
この治療は**1回で終わりではなく、“長期的に付き合う治療”**であることが大切なポイントです。
再発を防ぐためにも、医師の指示に合わせて定期的な検査・注射を続ける必要があります。
● 治療前の注意点(禁忌やチェック項目)
抗VEGF薬の注射を受ける前には、全身状態の確認が行われます。
以下のような場合には注意や延期が必要になることがあります。
- 最近、脳梗塞や心筋梗塞を起こした方
- **感染症(結膜炎・麦粒腫など)**がある場合
- **抗凝固薬(血をサラサラにする薬)**を服用中の方は、出血リスクの説明を受ける場合あり
また、1回の注射にかかる費用が高額で、3割負担で1回約5万円、2割負担で約3万円、1割負担だと1万5千円ほどかかります。



高額な治療なので、高額療養費制度を上手に活用しましょう。
月に一度マイナンバーカードを読み取れば、月の上限額に合わせた請求額になるから、持っている方は活用するといいでしょう!
● 注射当日の流れ
- 散瞳薬・点眼麻酔薬を時間をおいて、3~4回ほど点眼する
- 処置用のベッドに横になり、器具を使って瞼を開く(開瞼器)
- 眼球に少量の薬液を注入(硝子体内注射)
- 終了後、抗菌薬の点眼または眼軟膏をつけ、眼帯をする
- 注射当日は、洗髪・洗顔は控える(主治医の指示による)
注射後に「少しゴロゴロする」「白い濁りが見える」ことがありますが、多くは一時的です。
ただし、痛み・急な視力低下・黒い影が広がる・目ヤニがでるなどの症状があれば、すぐに眼科を受診しましょう。
● 定期的な治療が何より大切
抗VEGF治療の目的は、視力を守り続けること。
「今は見えているからもういいかな」と思って中断すると、再出血や新生血管の再発につながります。
視能訓練士として検査を担当していると、継続治療を続けた方ほど視力維持率が高いことを実感します。



悪くなってから治療するより、悪くなる前に治療したほうが断然視力の回復具合もよいです。
悪くなる前に定期的に受診しましょう。
7. 日常生活でできるセルフケア


- 禁煙を継続する
- 緑黄色野菜を多く摂る
- 強い紫外線を避ける(UVカット眼鏡・帽子)
- 片目ずつ見え方をチェックする習慣をつける
これを守れば必ず発症しないといった画期的なものはありません。
すべての病気に共通したことですが、規則正しい生活を心がけることが第一です。
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8. まとめ


加齢黄斑変性は、早期に気づけば進行を抑えることができるようになってきた病気です。
「見え方のゆがみ」や「真ん中が見づらい」と感じたときは、自己判断せず、早めに眼科で相談しましょう。
小さな違和感を見逃さないことが、見える未来を守る第一歩です。
【中途失明原因第1位の緑内障についてまとめました↓↓】













